24時間

風邪がずるずる続くので9時に寝たら、2時に目が覚めた。
仕方がないので2時から4時まで異動の希望調書を書いた。
異動は希望するけど、ほんとに異動できるのか自信がなかった。
異動できたらできたで、そこでちゃんとやっていけるのか、
大学入試時代の入寮試験を思い出して暗くなり、
学生時代の語学留学を思い出して怖くなった。

深夜というのは実に寂しくて、
色んな人に一括送信で、誰か起きてない?とメールをした。
ちょっと待って、お茶をいれてくる、と返事があった。

返事があるとしたらその人だろう、と思っていた。
期待もしていた。
期待はしていたけど、実際返事が来てしまうと、途方に暮れた。

どうして俺は、それでも この人に期待するんだろう。
この人はどうして、

ま、それは言うまい。

4時から6時まで電話をした。
とりとめのないよしなし事だった。

もう一言、はもう言うまいと決めていたし、
言うに言えなかった。
ふとした短い沈黙の度に、それがもどかしかった。
受話器の向こうに同じもどかしさを、
それでも 嗅ぎ取ろうとしている自分が哀れだった。

電話を終えると、それでも 楽しかった自分がいた。
待ち伏せしていたメールが入って、大丈夫?と安否を尋ねていた。
大丈夫なので放っておいて欲しかった。

電話が鳴った。
大丈夫?とその人は改めて言い、
大丈夫、ありがとう、と応えると、
しばらくよしなし事を話した後、
先日、彼女のそれ を教えてくれたのとまったく同様に、
その人は、彼女がそれ に基づき、ぼくについて話した、具体を明かした。
完膚なきまで。

大丈夫、とぼくは言い、ありがとう、と続けなくてはいけなかった。
先日、泣いて止まないこの人のため、
風邪を引くまで言葉をかけ続けた自分を殺したかった。

もう一言、はもう言うまいと決めていたが、
今日までの間に変化があることに、それでも 期待し、
電話の向こうに、もどかしさの芽をせめて一粒、というよりも、
神通力を駆使して在らしめんと祈念す、かのようだった自分、没。

珍しい人のメールが入る。
朝から相談事で悪いけど。
大丈夫、とぼくは送る。
電話が鳴った。

12時、烏丸、大丸前。
裏道、小間口、板前フレンチ。
京都本懐、魚のランチ。

異動したいと言ってしまったけど、やっぱり残りたい。
と、その人は言う。
間に合うか、できるかしら。

知らぬ。わからぬ。
大丈夫、とぼくは言う。
もう一度改めて、今回この機会をきっかけに、冷静に考えた。
もう少しここで、ただし別の部署で仕事をしてみたい。申し訳ない。
大丈夫。

ありがとう。
以上。

そんな ことはない、4時から6時が裏付ける。
とその人は言う。強く励ます。
ぼくは心を突つかれる。疼きだす。
信じられること、それ自体がない、とそれでも 思いは巡って辿りつく。

ぼくがもしもそう だとしたら、今君はどう思う。
ランチでの会話をどう思う。再来週の約束をどう思う。
などと、俺はどうして言ってしまうんだろう。

18時、梅田、大丸、砂時計。
27階、夜景、入籍祝い。
暗がり、ソファ、フレンチコース。

予備校時代の友人が二人、入籍したのでそれを祝った。
な、と言うあう間合いが素敵だった。
勢い、話は参加者の最近になり、
今回もまた自分だけが一人なことを確認する。
好みじゃない人にしないといけない、と新婦さんに諭される。
もはや屈託がなく、シンプルに素敵だと思う。(新郎へのサービス含む)

今まさに生活を築いていかなくちゃいけないのに無計画な二人と、
いずれ近い将来、彼氏との二人の生活を作り上げるために堅実な人と、
とにかく、誰かとの生活を具体的な前提にしている姿がまぶしい。
ぼくの財布にはほとんどもう何もない。
部屋の机の上には、異動希望調書が書きかけのままだ。

おめでとう。

目が覚めた。阪急電車が河原町に向かう。
大阪から京都へ。みんなとは別の場所へ。
四条から百万遍へ。百万遍から高野へ。
電車に乗る、タクシーに乗る、自転車に乗る、一人部屋に帰る。
恋焦がれるような恋をもう何年もしていない、という悲しみのメールの
その悲しみを、ぼくはそれでも、悲しみに値する、と思う。

先んじて休日を埋めてくれるよう、それなのに ぼくは結局、
その人に返事をしながら、次のメールでお願いしている。
未来の話をしないで済むように。
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by fdvegi | 2005-11-04 00:30 | 京都在住 | Comments(0)
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