悲惨から遠く

友人に誘われて古い知り合いのお宅を訪ねた。
彼女はすっかり妊婦になっていて、マンションの玄関で手を振って迎えてくれる姿は
暗がりにもかかわらずどこか「天のテラス」を思わせて素敵だった。
新婚さんとは言わないが、若い夫婦のご家庭はこざっぱりとして趣味がよく、
質素だけどぬくもりがある。

ミシンを借用している間に出来上がっていた引越し祝い名目の鍋は、
作っておいてくれたかつおだしと鳥のスープがこの上なく上品で、
その上、カキとホタテから出たうまみがたまらない。
野菜は白菜やネギといった“いつでも誰でも手軽な”面々ばかりでなく、
ダイコンやゴボウ、謎のなっぱにニンジン、という風に色んなものが入っていて嬉しい。

ビールではなく沸かしておいたぬるいお茶を飲みつつ、
おいしいね、を連発する、高校時代からの親友である二人の、
かみ合ってるのか、勝手に喋っているのか知れない
途切れることのない会話を聞いているのは楽しい。

大学時代からの付き合いである友人もいつの間にかこんな風に、
毒やトゲがなくて、身の回りへの視線に根を張った、若い奥さんの会話をするのか、
と思うと、何だかほのぼのとしてしまった。

洗い物を終えた時の「あぁ、早く済んだ!」という一言は、
今まさに母親になりつつある彼女の声か、それとも
物心ついた時から年の離れた弟を上手にあやしてきたであろう彼女の声か、
いずれにしてもそこには、とうてい同じ年とは思えぬ年季があって、
言われた(聞いている)こちらとしては、やってよかった、と嬉しくなってしまう。

だんなさんは仕事の関係でいつも深夜に帰ってくるという。
それまで彼女が何をしているのか、もう寝ているのか知らないが、
24時過ぎの終電までその空白を埋め、にぎやかであることの一助でいた自分が嬉しく思えた。
帰るとき、マンションに着いた時とまったく同様に玄関先で手を振っている彼女は、
結局、フェンスで見えなくなるまでずっとそうしていた。

出来あがったミャンマースカートは明日、着てほしいと思っていた、
欲しいと言った人にあげることになっている。
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by fdvegi | 2005-10-17 00:30 | 京都在住 | Comments(0)
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