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第2回バンコクで読んでみた

一年ぶりにバンコクで読んでみた。

この間、特に後半の多くを妻は日本で過ごし、ぼくはバンコクで2度の手術と入院をした。
仕事がやたらと忙しかったのか、それとも、そうでもない生活すら一人暮らしというだけで負担だったのか、ひそかに地味に断続的に心身のバランスを欠いている時間が多かった気がします。
そこをなんとか本にすがってやっていた、のかもしれない。第一回に比べて本の数が随分と増えました。

本にすがるようになっただけスウェーデンやアメリカにいた頃よりも成長したなとも、しみじみ思う。
あれはあれで若いうちにはいい経験だったけどね。

以下、ほぼ順番通りに読んでみた。出張・旅先でも読んでみた。

 朽ちていった命―被曝治療83日間の記録
 花を運ぶ妹
 海炭市叙景
 マシアス・ギリの失脚
 巡査の休日
 日本はじっこ自滅旅
 エトロフ発緊急電
 スリランカの悪魔祓い
 夜を急ぐ者よ
 東南アジア紀行(上)(下)
 母なる自然のおっぱい
 仮借なき明日
 すばらしい新世界
 利休にたずねよ
 心星ひとつ
 彼岸花
 文明の生態史観
 大学とは何か
 ネプチューンの迷宮
 累犯障害者
 インテリジェンスの賢者たち
 差別と日本人
 苦界浄土 わが水俣病
 照柿(上)(下)
 狂気と王権
 プルーストを読む―「失われた世界を求めて」の世界
 情報の文明学
 物乞う仏陀
 日本銀行の深層
 江戸の財政改革
 消費税のカラクリ
 成長のアジア 停滞のアジア
 ドイツの大学
 同和と銀行 三菱UFJ銀行の“汚れ役”の回顧録
 誰もかけなかったタブー 原発と山口組と芸能裏人脈編
 廃墟に乞う
 湾岸線に日は昇る
 火天の城
 今夜すべてのバーで
 そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります
 龍は眠る
 マークスの山(上)(下)
 神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く
 在日米軍司令部
 彼女がその名を知らない鳥たち
 妻たちの海外駐在
 被差別部落の青春
 猫鳴
 九月が永遠に続けば
 吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日
 疾駆する夢(上)(下)
 白い手の残像
 風雲児(上)(下)
 タイの僧院にて
 夏天の虹
 当たるも八卦の墨色占い
 コインロッカー・ベイビーズ(上)(下)
 反・幸福論
 エロマンガ島の三人
 ねたあとに
 富子すきすき
 メナムの残照

暮らす土地・文化・状況、いわゆる環境というものが読書の感想にさえすこぶる影響を与えるんだということがこの間否応なく実感されました。
読書の感想に影響を与えるということは、ものの感じ方や考え方、自分そのものも変化してるんだろうな、一時的にでも。
それを成長と呼びたいほどは、ぼくも青くはなくなった。
が、刺激は刺激として確かに受容してるんだなーと、妙な実感みたいなものは湧きますね。

さぁ、今回も誰にも求められていないことを重々承知の上で「バンコクで読んでみた」大賞を考えてみましょう。

金「タイの僧院にて」青木保
銀「妻たちの海外駐在」ヒロコ・ムトー
銅「利休にたずねよ」山本兼一
次点「もの乞う仏陀」「神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く」石井光太

金賞は30年前のタイの寺での修行の話。師の偉大さに触れるたび身が震え、ピィの章では悪夢を見た。魂のお話ではなく形式の凄み。それは木や氷が音を立てて裂けるように、虚空にそれを聞くように、不意に入り込んでくる。2度読みたい。

銀賞、時代は違い環境も違うバブルなテンション。余分も多い。けれど一瞬一瞬の渇望の深さ、渇える心の描写はリアル。共有できないことの癒えなさが普遍すぎて辛く、けど逆にほっとする。基本的には楽しい本です。

銅賞、思わず母乳の話を思い出しました。母乳は要は血液っていう話。この本で利休がたてる茶は、まさに血。血のように濃く、母乳に近い。そんな無茶を口走らせる、すさまじい本。茶の湯ってすさまじいものなんですね。

次点、タイトルがいちいち秀逸。散漫ながら散漫になるのも分かる、そんなアジア。こういうことを書く人がいること自体が国の力量・底力だと思う。応援したい。

以上、バンコクで読んでみた。
by fdvegi | 2012-05-11 00:30 | 本を読んでみた | Comments(0)
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